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認知機能評価の試験設計

 認知機能評価に関する臨床試験において、有意な結果を得るための試験設計について考えてみます。

■認知機能評価試験の事例  
 松山大学、愛媛大学、えひめ飲料の産学官連携により、「河内晩柑」に含まれる成分での認知機能維持・改善に対する研究結果から、えひめ飲料が機能性表示食品として国内初となる「オーラプテン」での機能性関与成分の届出となった、臨床試験を例に検討致します。(2018年7月27日届出「POMアシタノカラダ 河内晩柑ジュース」)

【方法】
 認知能力や記憶力を示す指標として、認知機能全体の評価はMMSE検査、記憶力の維持及び高める機能の評価は10単語想起テストの3回繰り返しによる検査を実施した。
 健康な中高年者84名を対象にプラセボ対照二重盲検無作為化試験を実施した。無作為にオーラプテンが6mg/日含まれる125mlの試験ジュースとオーラプテンが0.1mg/日含まれる同じ容量のプラセボジュースを24週間継続して飲用した。試験開始直後と24週間後にMMSE検査、10単語想起テスト、血液生化学的検査を行い、統計解析にて比較評価を実施した。

【主な結果】
 2名が途中で試験参加を中止したため、82名(試験ジュース群41名、プラセボ群41名、年齢(平均±標準偏差:71±9歳)、女性55名、男性27名)を最終分析対象者とした。MMSEで認知症と診断された参加者はいなかったが、試験終了時に3名の参加者が軽度認知障害と診断された。
10単語想起テストスコアの変化率において、試験ジュース群においてプラセボ群との比較により有意に高い(P<0.05)結果であった。このことから、オーラプテンを含む飲料を摂取することは、「健康な中高年者の認知機能の一部である記憶力(言葉を記憶し、思い出す力)を維持する機能」が認められた。 また、本試験ジュースの摂取により血液生化学的検査のパラメーターのいずれも試験中に有意な変化が認められず、試験ジュースが原因と思われる有害事象の発生も認められなかったことからヒトにおける試験ジュースの安全性も確認された。

■認知機能評価試験の重要ポイント  
 認知機能評価試験においては、事例のようにMMSE検査や単語想起テストを実施するケースが一般的ですが、その場合、被験者の意識状態にバラツキがあると精度の高い結果が得られないケースが見受けられます。起床して間もなくで集中力を欠いている方もいれば、何等かの気がかりなことがあり意識が散漫になっている方もおられます。
 では、被験者の意識状態を一定にするにはどのようにすればよいのでしょうか?様々な方法が考えられますが、弊社の過去の臨床試験結果から検討すると、単語想起テスト等を実施する前に何等かの負荷をかけることで集中力が増し、被験者本来の集中力が発揮された状態、即ち一定の意識状態が保たれるのではないかと考えています。
 負荷については、いろいろな方法が考えられますが、重要なのは集中力を要する何等の負荷である必要があると考えられます。今後も臨床試験の実施結果から、最適な方法を検討して参ります。