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中国の「届出制保健食品」

  日本では2015年にスタートした機能性表示食品制度ですが、お隣中国にもそれにあたる届出制の保健食品制度があります。従来の「食品安全法」に基づき2015年に改正公布された新食品安全法です。さらに翌年2016年には「保健食品登録および備案管理弁法」が公布され、一部の保健食品に対して届出制が開始されました。これにより中国の保健食品は認可制と届出制の二本立てになったわけですが、両者には時間とコストの面で大きな違いがあります。認可制は、60万元(900万円)以上の費用と3年以上の時間をかけ、期限付きの認可証を取得するのに対し、届出制では、30万元(450万円)ほどの費用と試験期間を含む8ヶ月程度の時間で、無期限の届出証書が取得できるのです。今年7月時点での届出受理数は中国国産品が2299品目、輸入品が55品目となっていて、輸入品の35品目は米国製品が占めています。ですがその中に日本製品は1品目もありません。これまで日本企業が保健食品の認可を取得する際には、1500万円以上の費用と5年以上の時間を要することも稀ではありませんでした。つまりハードルを低く届出制を選択することにより、中国市場への参入は比較的容易になるのです。

  日本の機能性表示食品も年々順調に受理数を伸ばし、5年目を迎えた現在、2400超の品目が届出受理されています。しかしその市場性においては課題が残り、実際に流通している製品は1000以下、受理数の半分にも満たないのです。CMやドラッグストアなどで目にする機会は増えましたが、まだまだ制度自体の認知度も低く、コストと時間を費やして苦労の末に受理された製品でもさほど市場には出回っていない、というのが現状なのです。

  そこで海外市場に目を向ける事は得策と言って良いでしょう。そもそも機能性表示食品制度は海外でも通用するという構想のもと作られた制度であり、各企業が機能性表示を狙って整えたエビデンスは、海外市場、先ず以って上述の中国届出制保健食品として概ね通用すると思われます。自社製品の高度化を図るには、当初から中国市場を視野に入れたプロセスを踏むことが有効なのです。

  数年前、いわゆる「殺虫剤入り冷凍ギョーザ事件」や「メラニン入り粉ミルク事件」など社会を揺るがす食品安全事件が、絶えず報道されていた中国食品ですが、現在では法を整備し活用することで目覚ましい成長を遂げています。まず中国の届出制保健食品として受理を目指すことで、追って日本の機能性表示食品として受理される近道になるかもしれません。順調に規模を拡大する機能性表示食品、そして中国の届出制保健食品。日本食品業界の発展は海外なくしてあり得ないのです。